一般社団法人 日本在宅医療学会の活動内容と今後の方向性

理事長 城谷 典保

I:我が国の現状と今後の社会的ニーズ

城谷典保
理事長 城谷 典保

 2014年度から少子・超高齢・多死社会でも安心して暮らせるような地域づくり、地域包括ケアシステムが国家プロジェクトとして始まった。このシステム構築の中核となるのは在宅医療における医療・介護の連携と医療体制においては急性期病院と地域医療・介護との密接な連携体制である。特に、治癒が望めない医療依存度が高い疾患や病状を持っている人やその家族が安心して地域で暮らすためのシステム構築が肝要である。すなわち、在宅における治療法の標準化、医療依存度の高い利用者に対するケア、従事者の質の向上、医療および介護人材の育成、情報共有体制の構築、継続医療を念頭においた病診連携体制の構築と急性期病院の医療従事者および地域住民の意識変容が必要である。

II : 日本在宅医療学会会員の特徴

  • 急性期病院などの病院に所属する会員が多い
  • 緩和医療や疼痛治療の専門家の参画
  • 栄養療法の専門家(医師、栄養士、薬剤師)が参画
  • 神経難病の専門医が参画
  • 医療依存度の高い疾患の在宅医療・介護を行っている医療・介護職の参画
  • 外来化学療法を行っている専門家(医師、看護師、薬剤師)の参画

III : 日本在宅医療学会のこれまでの流れと現在の活動内容

  1. 医療依存度の高い疾患や病態における在宅医療システムの構築と普及
    • 在宅緩和ケアの普及に関わる事項
    • 在宅における症状緩和治療に関する研究
    • 在宅栄養治療および管理に関する研究
    • 在宅緩和ケアに関する教育、啓発活動(在宅緩和ケアセミナーの開催)
  2. 在宅および外来がん化学療法に関わる事項
    • 外来化学療法の質の向上
    • 学術大会における外来化学療法セミナーの開催
    • がん化学療法の在宅(家庭)への導入に関する研究
  3. 神経難病患者の在宅管理に関わる事項
    • 地域での支援システムの構築(急性期病院専門医と地域かかりつけ医との連携)
    • 医療依存度の高い疾患や病態における急性期病院と地域医療・介護機関と の連携体制の構築
    • 地域連携部門の強化をはかるための方策の検討
  4. 地域での医療・介護情報共有システムの開発と普及
    • ICTの開発

IV : 在宅医療の人材育成

  • 在宅医療に係る人材育成のための連携(関連学会研究会と合同で教育スタッフの人材バンクを構築して、各市町村の各職種あるいは多職種研修会の講師として派遣する)
  • 医療依存度の高い在宅医療を担当する医療従事者の育成
  • 地域連携部門の育成

V : 日本在宅医療学会の今後のあり方

 基本的にはこれまでの学会の目標をそのまま継続し発展させながら、関連学会との連携の上で、地域包括ケアシステムの構築をはかるとともに、どのような病状であっても安心して在宅を含む地域の中で暮らせるよう、在宅治療の質の向上、在宅治療に関わる医療機器の開発、在宅医療の質の向上、在宅栄養支援システムの構築、情報共有システムの開発、急性期病院の地域連携部門の強化などを図るための研究および人材育成を進める。また、同時に、急性期病院医療従事者および地域住民への意識変容を促す活動を行う。
 なお、学会の会員として は、医師(大学病院教育担当者、病院勤務医、在宅医)、看護師(大学教育担当者、訪問看護師、地域連携部門担当者などの病院関係者)、薬剤師(大学教育担当者、病院勤務者、調剤薬局)、リハビリ関係職、介護関係者、関連分野の企業担当者、MSWなどを想定し日常的な研究、教 育、啓発活動を行う体制を整備する。

VI : 関連学会・研究会との連携

  • 標準的な在宅医療を全国に展開するための連携
  • 在宅医療に係る人材育成のための連携
  • 地域住民に対する在宅医療の啓発活動のための連携
  • 在宅医療のシステム改善のための連携
  • 診療報酬・医療介護総合確保事業など含め政策に関する連携